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2005年09月29日
香りの歴史のはじまり
アロマテラピーについて詳しくお話しする前に、香りの歴史についてお話ししましょう。
どんな風にして昔の人々が香りを役立ててきたかを知ることで、何故アロマテラピーが生まれたのか、そのわけも、きっとすんなりと心に浸み込んでくることと思います。
さて、アロマテラピーが確立するずっとずっと昔から、香りは人類にとって重要なものでした。その歴史は、遡ること、なんと15万年。
「え? そんなに大昔から?」
実は、そうなんです。考えただけで気が遠くなるような、遠い遠い昔から、人は経験的に、香りが自分たちにとって役立つものだということを知っていたんですね。それって、かなり凄いことだと思いませんか?
15万年前といえば、ネアンデルタール人の時代です。彼らはどんなふうにして香りを利用することを思いついたのでしょう。
さて、香料を意味するperfumeはラテン語のper fumum=煙を通してから派生した言葉です。つまり、ネアンデルタール人は火を覚え、暖を取ることや灯りのために色々な草や木を火にくべている内に、そこから「火にくべると良い香りがするもの」を経験的に覚えていったのでしょう。
想像してみて下さい。何の気無しにその辺にあった木を火に放り込んだときに、今まで知らなかったとても良い香りがあたりに漂ったときの、彼らの驚きと感動を。現代に生きる私たちですら、良い香りには何か神秘的なものを感じることがあります。
15万年前という途方もない過去にあったネアンデルタール人にとって、その香りは、どれほど彼らを陶酔させ、あるいは気分を高揚させたことでしょう。
そして、それはダイレクトに彼らの原始宗教へと結びついていったのです。彼らは原始宗教の儀式――特に、死者を埋葬するときに香りを用いました。
香木を火にくべたとき、得もいわれぬ香りを漂わせながら夜空へとたち上ってゆく薫煙は、死者の魂を天に導いてゆく、呪術的かつ神聖なものとしてみなされていったのです。
時代は下って古代エジプト。エジプトと言えば何を思い出しますか?
ピラミッド、スフィンクス――そして、やはりミイラなのではないでしょうか。
香料はミイラを作るとき、防腐剤として重大な役目を担っていました。中でも多く使われていたのはシダーウッドです。エジプトでは死体を完全な形で保存しておけば、死者の魂が戻ってくると信じられていました。
そして、シダーウッドは永久不滅のものと考えられており、シダーウッドの香油を浸した麻布で死者を包んで魂の復活を祈ったのです。
ミイラにはシダーウッドの他にも様々な香料が防腐や消臭などのためにふんだんに用いられています。ミイラの語源になった没薬(ミルラ=myrrha)や丁子(クローブ)、肉桂(シナモン)が代表的なものです。
死の儀式は古代宗教では重要なものであり、そこで使われる香料というものもまた、特別なものとして扱われていたのですが、特別視されるあまり、古代エジプトでは王と僧侶しか香を扱うことを許されませんでした。
巷に香りがあふれ、学生でもたやすくブランドの香水を手にし、思うままに香りを楽しむことができる現代人の感覚では「えーっ! 信じらんなーい!」「ずるーい!」って感じですよね。
でも、昔は香料は貴重で高価なもので、たとえ禁じられていなくてもなかなか庶民の手に入るものではありませんでした。
だからこそ、新約聖書でマグダラのマリアが香油をキリストの足に塗ったとき、ユダが「何という勿体ないことをするのだ」と怒り、キリストは「それほど高価なものを私に捧げてくれるというその気持ちが有り難いのだ」とユダをいさめたのです。
今でも世界各地のさまざまな宗教で、聖なる香りは儀式に用いられています。古えに生まれたアミニズムの儀式の風習は、連綿と途切れることなく、私たちが普段気づかないところで現代に息づいているのです。
投稿者 asidru : 2005年09月29日 13:25