« 香りの歴史のはじまり | メイン | 美女と香りの関係 »

2005年09月29日

古えの貴重な香り・乳香(フランキンセンス)と没薬(ミルラ)

 古代の代表的な香料として、乳香(オリバナム)と没薬(ミルラ)があげられます。両方ともフウロソウ目カンラン科の樹皮から取れる樹脂です。


・乳香
 乳香は、そのままではほとんど匂いを感じませんが、火にくべた途端、甘く強い芳香を放ちます。この香りの成分はα-ピネン、サピネンです。

また、乳香が貴重なのはその独特の芳香のみならず、非常に強い殺菌効果をも併せ持っていたからです。クレゾール、チモールがその殺菌成分になります。

 何千年もの間、乳香は宗教や文化に溶け込み、また民間薬としても活躍してきました。現在もその地位は大変高く、フランスでは「純粋な芳香」という意味を持つフランキンセンスと呼ばれ尊ばれているのです。

・没薬
 そして、その乳香と並び称されるのが没薬です。没薬の名がミイラの語源となったことは先ほどもお話ししましたね。乳香と同じく、クレゾールが含まれていて殺菌力もありますが、没薬の特徴はなんと言っても、その強い防腐力です。オイゲノールがその防腐力の主役で、ミイラを作るときにその威力を発揮しました。

 また、香りも大変良く、ムスクに似た甘いエレガントな香りは上流階級の貴婦人方に好まれ、香油として愛用されていました。

 二つの大いなる香料、没薬と乳香は、今までにお話ししたとおりの薫り高さと優れた効能ゆえ、大変貴重なものとして扱われていました。
 キリスト生誕の折、東方からはるばる訪れた三賢者から捧げられたのも没薬と乳香でした。救世主の生誕に、賢者たちは最高の礼を尽くしたのです。

 シバの女王で有名なシバの国は、実はこの没薬と乳香の重要な産地であり、独占販売を行っていたといわれています。旧約聖書でシバの女王がソロモン王が会見した折に、女王がソロモン王に乳香を進呈しているのは、そういう事情があったからなのです。特に乳香同量の金の価格よりも高価だった、といわれ、古代ペルシャで「乳香は神、没薬は医師、黄金は王」と言わしめるほどでした。

投稿者 asidru : 2005年09月29日 13:29

コメント

コメントしてください




保存しますか?