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2005年09月29日
香りの心理的作用
・好きな香りは心に効く
駅の中にある某お菓子屋さん。いつも甘い香りが漂ってきます。でも、疲れて帰ってくるときはその甘ったるい匂いが辛くて辛くてしょうがない。好きな人には、嬉しいけれど、そうでない人には嬉しくない。エレベーターの中のキツい香水も困りものですよね。
そんな風に人には好きな香りと嫌いな香りがあるのは当たり前です。そして、好きな香りは、心にとてもよく効くのです。大好きな香りをかいでいると、心が落ち着くといった経験は、誰しも覚えがあるでしょう。
嫌なことがあったり、何かを我慢してたりすると、大脳辺縁系が抑えられ、ストレス状態になりますが、好きな香りをかぐと、視床下部に作用して、リラックスすることができます。
・香りが引き起こす「プルースト効果」
街を歩いていて、漂ってきたかすかな香りで、ふと立ち止まる。何か、思い出しそうな気がする。
あれは、何だった?もう一度香りを吸い込んでみる。
その途端、鮮やかにあの日のあの場面が蘇ってきた。もう、何年も前のこと。その時の気持ちまで覚えてる。そう、あのときもあの花が咲いていた―――。
そんな風に、何かの匂いで、記憶が蘇ってきた経験はありませんか?
私は薬局の調剤室でフェノール亜鉛華リニメントを練っていると、何か思い出しそうになって気になって仕方ないことがありました。それは、小学校の水彩絵の具の匂いにとてもよく似ていたのでした。うーん、何だか全然ロマンチックじゃないぞ。
特定の匂いで記憶を喚起されることを「プルースト現象」と言います。
プルーストの名作小説「失われた時を求めて」で、記憶を失った登場人物が、マドレーヌを紅茶に浸したときの香りで記憶を蘇らせたというエピソードに由来します。
香りは記憶の引き出しの開け閉めに関わっています。それは、記憶を司る海馬に、香りがダイレクトに作用するからなのです。
香りが記憶されるとき、海馬は香りだけではなくてその場の情景や感情も一緒に結びついて記憶されるのです。
この記憶は、個人的な記憶だけでなく、遺伝子に組み込まれた人類の記憶も含まれています。
匂いの好みに個人差はあれど、腐敗臭は誰でも嫌な匂いだと感じます。こんんな風に、危険なものを理屈ではなく生理的に判断したり、生命を維持するために有益になるようなシステムができあがっているのです。
スヌーピーでライナスがいつも毛布を持ち歩いているのは何故でしょう。毛布の存在そのもの、手触り、色と形、まつわる想い出、理由は色々あるでしょう。
私はそこに、匂いも加えたいと思います。ライナスが常に持ち歩いていて、「これがあると安心できる」と思っていると、その毛布の匂いそのものがライナスにとって安心できる匂いとして記憶されているから、ではないでしょうか。
香りが起こす心理作用は、そのメカニズムがわかっていても、何だかとても不思議な感じがしますね。だからこそ、太古の昔から、香りは神秘的なものとして扱われてきたのだと思います。
アロマテラピーを通じて、良い香りでリラックスしたり、マッサージで痛みを和らげたり――そんなふうにして、香りが与えてくれる心地よい記憶が増えていくことは、あなたの生活を更に心豊かにしてくれることでしょう。
投稿者 asidru : 2005年09月29日 13:46