« ラベンダー | メイン | 時をかける少女とラベンダー »

2005年09月30日

ラベンダーの逸話

 20世紀初頭、フランスの化学者ガットフォセが実験中の事故で火傷を負ったときに、咄嗟にラベンダーの精油を患部に塗ったところ、非常に効果があったことから、この植物療法をアロマテラピーと命名したのが本格的なアロマテラピーの始まりでした。
 その後、フランス人の軍医ジャン・バルネ博士に、ラベンダーの殺菌、消毒、鎮痛などの優れた作用が着目され、兵士の傷の治療や痛み止めとして大いに活用されたそうです。パルネ博士の著作「バルネ博士の植物=芳香療法」は、その後のアロマテラピー発展の礎となっています。

 でも、それよりもずっとずっと昔からラベンダーはヨーロッパを中心とした各地で親しまれていたのです。

 古代エジプトのテーペでは、ラベンダーは城壁をめぐらせた庭で栽培されており、その庭は「聖なる庭」と呼ばれていたそうです。香りが良いことからミイラの副葬品としてもよく用いられ、かのツタンカーメンの墓が発掘されたとき、ラベンダーの香りがまだ墓の中に残っていたそうです。その鮮やかな香りは、 3000年もの永い時の経過を感じさせないほどだったとか。

 また、ラベンダーは本来香りのない植物だったが、聖母マリアがキリストの産着をラベンダーの花の上に干したところ、芳香を放つようになったという伝説も残されています。没薬といい、乳香といい、キリストには色々な芳香植物の逸話があるようですね。

 ラベンダーはローマ兵からヨーロッパに広がってゆきました。
 行軍中の兵隊達が、ラベンダー畑を通りかかったとき、その香りに戦闘意欲を次第に失い、ラベンダー畑で眠り込んでしまったという逸話もあります。

 古代ギリシャでは神々の生贄となる娘たちがラベンダーで飾られ、また、富裕層の人々は湯船が紫に染まるほどのラベンダーを浮かべ、その薬効の恩恵にあずかりつつ、心安まる香りで優雅なバスタイムを過ごしたそうです。

 イギリスではチューダー朝からスチュアート朝時代に特に人気が高く、凝った造りのイングリッシュガーデンの周りに植えるハーブとして、また、貴婦人の使うラベンダー水として人々に愛されてきました。特にラベンダー水はチャールズ一世の妻、マリア・ヘンリエッタ妃のお気に入りの香水だったそうです。

 時代が下ってヴィクトリア朝では気絶した女性にラベンダーの香りを気付け用に用い、“魔法の香り”と呼んでいました。外出時にラベンダーをバッグやドレスに忍ばせていない女性はレディではないと言われるほどで、その人気の高さが伺えます。

 また、イタリアではラベンダーの時期には、花の茂みに洗濯物を広げ、香りを染み込ませながら乾燥させる習慣があり、虫除けと消毒の効果を兼ねていました。

 花の季節が終わっても、ラベンダーは、たんすの防虫用のラベンダー・バンドルや心地よい眠りのためのラベンダー・ピロー、それからハーブティ、ラベンダー水などの形で、人々の生活に溶け込んでいたのです。

投稿者 asidru : 2005年09月30日 11:45

コメント

コメントしてください




保存しますか?