2005年09月30日

時をかける少女とラベンダー

 日本でラベンダーの香りが一般に知られるようになったきっかけは異才の巨匠筒井康隆のジュブナイルSF 「時をかける少女」でした。ラベンダーの香りを嗅ぐとタイムスリップしてしまう、という設定が斬新で、ナンセンスSFで有名な筒井康隆作品の中で最もリリカルな作品です。

 古くはNHK少年ドラマシリーズで映像化されていますが、ブレイクしたのはやはり原田知世主演・大林宣彦監督の映画版でしょう(個人的には少年ドラマシリーズのセーラー服の方が好みなのですが(^_^;))
 大林監督お得意の尾道。入り組んだ細い道と坂と階段。古い町並みは、それだけでどこか違う世界に通じているような感じがします。そこへこのSF作品をもってきたのはさすがの感性。
 原田知世という、普通のアイドルとはどこか違うちょっと不思議なイメージを持つ彼女は、この作品のヒロインにぴったりだったと言えるでしょう。

 映画公開時は前売り券を買うと、ラベンダーの香りのしおりがついてきたこともあって、ラベンダーの香りは一般に知られるようになりました。

 ユーミン作詞作曲の主題歌「時をかける少女」もヒットしました。ユーミンバージョンと原田知世バージョンのあるこの主題歌シングル、実は原田知世バージョンにはラベンダーの香りのついているバージョンも存在したそうです。30代半ば~40代の方は、ラベンダーの香りと言えば「時をかける少女」、「時をかける少女」と言えばラベンダーの香り、というイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。

投稿者 asidru : 11:46 | コメント (0)

ラベンダーの逸話

 20世紀初頭、フランスの化学者ガットフォセが実験中の事故で火傷を負ったときに、咄嗟にラベンダーの精油を患部に塗ったところ、非常に効果があったことから、この植物療法をアロマテラピーと命名したのが本格的なアロマテラピーの始まりでした。
 その後、フランス人の軍医ジャン・バルネ博士に、ラベンダーの殺菌、消毒、鎮痛などの優れた作用が着目され、兵士の傷の治療や痛み止めとして大いに活用されたそうです。パルネ博士の著作「バルネ博士の植物=芳香療法」は、その後のアロマテラピー発展の礎となっています。

 でも、それよりもずっとずっと昔からラベンダーはヨーロッパを中心とした各地で親しまれていたのです。

 古代エジプトのテーペでは、ラベンダーは城壁をめぐらせた庭で栽培されており、その庭は「聖なる庭」と呼ばれていたそうです。香りが良いことからミイラの副葬品としてもよく用いられ、かのツタンカーメンの墓が発掘されたとき、ラベンダーの香りがまだ墓の中に残っていたそうです。その鮮やかな香りは、 3000年もの永い時の経過を感じさせないほどだったとか。

 また、ラベンダーは本来香りのない植物だったが、聖母マリアがキリストの産着をラベンダーの花の上に干したところ、芳香を放つようになったという伝説も残されています。没薬といい、乳香といい、キリストには色々な芳香植物の逸話があるようですね。

 ラベンダーはローマ兵からヨーロッパに広がってゆきました。
 行軍中の兵隊達が、ラベンダー畑を通りかかったとき、その香りに戦闘意欲を次第に失い、ラベンダー畑で眠り込んでしまったという逸話もあります。

 古代ギリシャでは神々の生贄となる娘たちがラベンダーで飾られ、また、富裕層の人々は湯船が紫に染まるほどのラベンダーを浮かべ、その薬効の恩恵にあずかりつつ、心安まる香りで優雅なバスタイムを過ごしたそうです。

 イギリスではチューダー朝からスチュアート朝時代に特に人気が高く、凝った造りのイングリッシュガーデンの周りに植えるハーブとして、また、貴婦人の使うラベンダー水として人々に愛されてきました。特にラベンダー水はチャールズ一世の妻、マリア・ヘンリエッタ妃のお気に入りの香水だったそうです。

 時代が下ってヴィクトリア朝では気絶した女性にラベンダーの香りを気付け用に用い、“魔法の香り”と呼んでいました。外出時にラベンダーをバッグやドレスに忍ばせていない女性はレディではないと言われるほどで、その人気の高さが伺えます。

 また、イタリアではラベンダーの時期には、花の茂みに洗濯物を広げ、香りを染み込ませながら乾燥させる習慣があり、虫除けと消毒の効果を兼ねていました。

 花の季節が終わっても、ラベンダーは、たんすの防虫用のラベンダー・バンドルや心地よい眠りのためのラベンダー・ピロー、それからハーブティ、ラベンダー水などの形で、人々の生活に溶け込んでいたのです。

投稿者 asidru : 11:45 | コメント (0)

ラベンダー

 各論の第一回目はラベンダーです。
 数ある精油の中でも最もポピュラーで人気の高いラベンダーは、ハーブの女王と呼ばれています。そのすっきりとした香りを吸い込むと、胸の中に爽やかな初夏の風が吹き抜けるような感じがします。私も最初に買った精油はラベンダーでした。

 何故これほどまでにラベンダーは人気があるのでしょう? それは、親しまれやすい香りと、精油の中でも最も使用範囲が広く、様々な形で利用できたからではないでしょうか。

学名:Lavandula officinalis,Lavandula augustifolia
 洗うというラテン語Lavareから来ているという説と、鉛がかった青という言葉から来ているという説があります。

科名:シソ科(Lamiaceae)

主な産地:フランス、イギリス、ブルガリア

成分:
リナロール
・消毒作用があります。ラベンダー油の中でも酢酸リナリルと並んで、最も含有量の多い成分です。

酢酸リナリル
・沈静、消炎、鎮痛作用があります。ラベンダーを用いるアロマテラピーで重要な役割を担っています。
 頭痛の時に、こめかみにラベンダーオイルを使ってマッサージすると、とてもよく効くそうです。マッサージ・皮膚からの直接の浸透と、こめかみという鼻に近い部位に用いることで、鼻からの吸収が良くなり、心理面・生理学面の両方から作用するので即効性も期待されます。

βカリオフィレン
・β-カリオフィレンは月経前の鬱状態を改善することが明らかになっています。月経前に心理的に不安定になったり、体調が悪くなることを月経前症候群(PMS)といいます。このPMSと病体の同じマタニティブルーにもβ-カリオフィレンが有効であることがわかり、現在PMSやマタニティブルーの医療補助物質として販売されています。

 この、珍しい九員環の構造式は、アーケードゲームの名作パックマンに似ていることから、有機化学の分野では俗に「パックマン」と呼ばれているそうです。頭脳明晰でバリバリ仕事派のイメージのある研究者の人たちも、結構お茶目なところがあるようですねv

ラバンデュロール
 含有量は非常に少ないですが、ラベンダー特有の香りを放つ重要な成分の一つです。


テルピネン-4-オール
 消毒効果があるとされています。


  
揮発度:トップノート~ミドルノート
使用部分:花、葉
香りの特徴:爽やかなフローラル系
花言葉:誠実・貞節 古代には沈黙という意味もあったようです。
別名:薫衣草
相性の良い精油:ラベンダーは相性の良い精油が多いので応用が利いてとても        便利です。オレンジスイート、カモミール、クラリセージ、        ジャスミン、ゼラニウム、レモン、ローズマリーなど

投稿者 asidru : 11:45 | コメント (0)

2005年09月29日

エッセンシャルオイル使用上の注意

 こんな風に、とても便利で健康にも、生活にも、リラクゼーションにも応用できるアロマテラピーですが、精油を扱うときには必ず注意しなくてはならないことがあります。楽しく安全にアロマテラピーの恩恵を受けるため、この注意は必ず守って下さい。 

・肌に直接塗るときは必ず希釈する
 真性ラベンダー、ティートリー、ペパーミントなどの一部の例外を除き、精油を直接肌に塗るときは必ず希釈して下さい。
 希釈するときは、キャリアオイルを使います。キャリアオイルは天然の植物性オイルで、未精製のものの方がより良いとされています。
 ホホバオイル、スイートアーモンドオイル、グレープシードオイルなど、キャリアオイルにもたくさんの種類があります。また、キャリアオイルにも有効成分が含まれており、精油と混ぜることで、よりよい効果を上げることができます。

 希釈の目安は1%以下。精油1滴に対して5mlの割合で薄めましょう。肌が弱い方や、アレルギー体質の方、そして皮膚の薄い顔に使用するときは特に注意して、0.5%からはじめて下さい。


・精油は飲んではいけません
 海外では精油を内服することもありますが、それは必ず医者の指示の元で行われています。精油は高濃度の成分が含まれていますので、大変危険です。絶対に飲まないように、また、お子さんが口にしたりしないよう、安全な場所に保管して下さい。

・パッチテストを行う
 パッチテストとは、アレルギーのテストのことです。
 希釈した精油を上腕部に塗布し、48時間放置します。通常は1時間も経たずに結果が出ますが、ものによってはアレルギー反応が起きるまで長い時間がかかるものもあります。
 かゆみや刺激を感じたり、赤く腫れたりした場合、その精油にアレルギーがあると言うことですので、アレルギー反応が出た精油は使用しないで下さい。

・光毒性のモノに注意
 柑橘系などの光毒性のある精油を使用したら、その後6時間は直射日光に当たらないようにしてください。

・保存期間は半年から1年
 精油成分は分解しやすく不安定なものが多いので、冷暗所に保存して下さい。期限は半年から1年です。

・ブレンドしたものは3週間程度で使い切れる量にしておく
 その都度使い切れる量にするのが一番良いのですが、作り置きをしたい場合は3週間を目安にして下さい。

・妊娠中の注意
 妊娠中はケトン、ホルモン類似物質を含む精油の使用はなるべく避け、使用する場合は医者のアドバイスを受けるようにしてください。特に妊娠後期は注意が必要です。

・高血圧。低血圧。てんかん、慢性疾患がある人は専門家のアドバイスを聞いてから使用して下さい。


〈新しい扉〉
 今回で、総論は終わりです。次回からは、各精油の特徴やその植物にまつわるエピソードをお話ししていきます。どんな成分が入っているのか、ブレンドするなら何と相性が良いのかなど、より深いお話になっていきます。
 今、あなたの目の前には、それぞれの精油に通じる扉がたくさん並んでいます。
 最初に開ける扉は、アロマテラピーの中でも最もポピュラーなラベンダーの扉です。青紫色のラベンダーの扉の中にはどんなお話が広がっているのでしょう? それは、次回のお楽しみです。

投稿者 asidru : 14:19 | コメント (0)

エッセンシャルオイルの使い方

 実際には、アロマテラピーって何をするものなんでしょう? その答は、今までのお話の中にもあちこちにちりばめられています。
 私は、みなさんがアロマテラピーをやってみたいと思われるなら、せっかくだから、より効果的に、より楽しく、そしてより安全に、アロマテラピーの恩恵を存分に受けてほしいと思います。

 香りを楽しみながら、身も心も十分リフレッシュできたら、きっとそれは深いリラクゼーションを皆さんにもたらしてくれるでしょう。

〈さあ、アロマテラピーをはじめよう!〉

・芳香浴
 アロマテラピーと聞いて、まず思いつくのがこの芳香浴。キャリアオイルで薄めたり、計ったりするのが面倒な人でも、簡単にアロマテラピーを楽しむことができます。

 ・ハンカチ・ティッシュに垂らして、嗅ぐ
 芳香浴の中でも一番簡単な方法がこれ。道具を揃える必要も、手順も何もいりません。出かける前にハンカチにオイルを垂らし、疲れたり、イライラしたりしたときに好きな香りでリフレッシュ!
 どの精油がどんな効果があるかわかってきたら、目的に合わせて、手軽に眠気覚ましにしたり、リラックスしたり、と使い分けることもできますね。
 ☆ハンカチに垂らすときは、シミにならない精油を選びましょう。

 ・カップ&ボウル
 カップや洗面器などに熱いお湯を入れ、オイルを1~3的垂らして、香りを吸い込む方法です。これも初心者向けの簡単で、特別な道具のいらない、良い方法です。
 タオルを頭からすっぽりと被り、蒸気を逃がさないようにして顔に当てる、フェイシャルスチームは美容的な効果を狙うときに有効です。


 ・アロマポット&ランプ
 上部の皿に水を入れて、精油を垂らし、下から暖めて部屋に香りを漂わせる方法です。アロマポットはろうそくに火をつけて使用しますので、火の元には十分注意して下さい。小さなお子さんやペットがいるなら、コンセントに差し込んで使うアロマライトの方が安全でしょう。
 どちらも、可愛らしいデザインのものから、ハイセンスなものまで色々揃ってますので、コレクションする楽しみもありますよ。

 私も、好みのタイプのものを見つけると、ついつい衝動買いしたくなってしまいます。夜の真っ暗な部屋にぽつんとともったアロマランプの灯りはほんわりと暖かく、ロマンティックで、立ち上る香りが体を包み込んで、眠りの世界へと誘ってくれます。

 精油の香りを部屋に漂わせるには、他にディヒューザーがあります。熱を加えず、成分に影響を与えないという利点がありますが、初心者が使うにはお値段が高めなので、ある程度慣れてきて、欲しくなってからでも遅くありません。
 アロマテラピーをご自分のお店などで効率よく利用したい場合は、是非ディヒューザーを使ってみて下さい。ある程度の広さがある場所では機械的に香りを拡散させるディヒューザーはとても便利ですよ。

 ・エア・フレッシュナー
 遮光性のあるスプレー壜に無水エタノール・精製水・精油を入れてよく混ぜて保存しておくと、いつでも好きなときに部屋にスプレーすることができます。

 エア・フレッシュナーは床磨きや、洗濯の時にも手軽に使うことができます。カビを予防したり、消毒になったりと、とても便利ですよ。

 ・慣れてきたら、ブレンドに挑戦!
 いつも同じ香りじゃつまらない、新しいものに挑戦したくなったら、精油を混ぜて使ってみましょう。自分好みの香り、より効果的な組み合わせを、試行錯誤しながら見つけていくのも、アロマテラピーの醍醐味の一つです。お気に入りのブレンドを開発したら、それを使って、いろんなものを作っていくこともできます。

・アロマバス
 お風呂にはいるとき、オイルを数滴垂らしてよくかき混ぜ、使用します。お風呂のお湯で暖められて、精油はバスルーム中に広がります。アロマバスをすることで、バスルームの目地にカビが発生しにくくなるという、思わぬ利点もありますよ。

 オイルの使用量は数種類使うときでも、合計で6滴までをめやすにしてください。湯温は少しぬるめの38℃~40℃で、ゆっくりと長めにつかると血行がよくなり、湯冷めしにくくなります。

 全身浴だけでなく、半身浴、足湯、手湯など、色々な入浴時に使えます。
 手浴の場合は湯量が少なく希釈度が低いので、フェノール類、アルデヒド類を含むものや柑橘系などの皮膚への刺激性が強いものはあらかじめ希釈してから使用する方が安全です。
 ピリピリとした刺激感がある場合は、速やかに使用を中止して石けんで洗い流しましょう。

 実は、私も昔、家でゆず湯をやったとき、全身がかゆくなった想い出があります。ゆず湯はゆずの果皮から直接お湯に精油成分が溶け出す、日本独自の古き良きアロマテラピーです。
 で、何でそんなことになっちゃったかと言えば、何にも知らない子供だった私は、面白がってゆずの果皮をお風呂の中でぎゅうぎゅう絞って遊んでしまったんですね。
 自然に流れるままにしておけば丁度良い濃度だったのにそんなことをしたら必要以上に濃度が濃くなってしまいます。知らなかったとはいえ、馬鹿なことをしちゃったものです。
 みなさんは、私みたいなことにならないように、きちんと量を守ってバスタイムを楽しんで下さいね。

・塗布
 キャリアオイルで希釈したり、白色ワセリンなどで軟膏を作って肌に直接塗ります。この方法は皮膚吸収がよく、効果抜群です。

・マッサージ
 希釈した精油や、精油から作った軟膏やクリームでマッサージすることで、ただ塗るよりも、吸収率がよくなり、マッサージ自体の効果との相乗効果を得ることができます。
 皮膚からだけでなく、香りが鼻や気管から吸収されるので、心理的な効果も得られ、リラクゼーションには最適です。

 症状に応じて精油を使い分けましょう。リンパに沿ってマッサージすると、血行もよくなり、より効果が高まります。

投稿者 asidru : 14:13 | コメント (0)

選ぶときの注意点

 さて、さっそくアロマテラピーのお店に精油を買いに出かけたあなた。

 あ、この香り好きかもv これにしちゃおっと♪――――と思って値札を見た瞬間、選んだものによっては、もしかしたら固まってしまうかもしれません。

「ちょっと何? 何でこんなちっちゃい壜にちょっとだけ入ってるのがこんなに高いわけ?」

「アロマテラピーって、何か面白そうだしやってみようかな」と思いたった人がつまづく第一関門が、実はここだったりします。

 でも、ちょっと待って。確かに、精油はお手ごろな価格のものから、目の玉が飛び出るほど高いものまでさまざまですが、まあ、基本的には、知らない人からすれば高いものに思えてしまうかもしれません。

 けれど、それにはきちんとした理由があるのです。

 精油は植物に含まれている成分を凝縮したものなので、ボトル1本分の精油を作るのに、とても大量の花や、葉が必要です。最高級のジャスミンの精油を一滴とるのにどれほどのジャスミンの花が必要か、以前お話ししましたね。
 それほど極端でなくても、手のひらの中に簡単に収まってしまうその小さなボトルの中には、見た目よりもずっとずっと価値のあるものが詰まっているのです。

 最初はちょっと高いと思うかもしれませんが、実際に使うときには薄めたり、数滴ずつ使うので、1本買うとこれで結構使いでがあります。

「でも、最初なんだし、取りあえず安物で試してからじゃダメなの? あっちの雑貨屋さんのはどれも一本千円もしなかったわよ?」

ついついそう思ってしまう気持ちはわかります。でも、安いものには、安いなりの理由が、これまたきちんとあるのです。
 昔はそれなりのきちんとしたお店に行かないと手に入らなかった精油も、今では、あちこちで見かけるようになりました。精油に詳しい店員さんのいるお店が増えてきたことも事実ですが、本当のところ、「アロマテラピー」の名を借りただけの、質のよくないものを置いている所が多いのが現実です。

 壜の大きさは専門店のものと同じなのに、どのオイルもあまり値段に差がなく、千円未満で手にはいるようなものは、まず、本物の精油ではありません。
 精油とは、100%天然のもの――それが絶対条件です。でも、そんな安物のオイルには必ず合成物が含まれています。もしかしたら、天然のオイルなんて壜の中の1割も入っていないかもしれません。

 海外の文学作品では「安香水の匂いがした」という表現をよく見かけますが、
精油も、合成物が含まれた安物はそれなりの匂いしかしません。そういうものは香りだけを真似したまがい物ですから、前回ご紹介した有効成分はもちろん、ほとんど入っていないのです。

「でも、私、ローズが凄く好きなんです! 最初はローズって決めてたのに、こんなに高いんじゃ手がでないわ……」

 そうですね。大好きな香りを最初に選びたい気持ちはとてもよくわかります。それなら、精油そのものから揃えるのではなく、キャリアオイルであらかじめ直接肌に使えるように丁度良く薄めている商品を専門店で選ぶという手もあります。
 これなら初心者でも、買ったその日からマッサージにアロマテラピーを取り入れることができますし、大好きな香りを手に入れられて一石二鳥!

 ただし、よーく成分をチェックして、精油とキャリアオイル以外のものが混ぜられていないか、確認して下さいね。

 ジャンクでキッチュなものにもそれはそれで良いところはあります。けれど、目的が「アロマテラピー」なら、「安かろう悪かろう」の精神で、本物を選び取って下さい。

「じゃあ、どんなものなら本物だってわかるの?」

 とっても良い質問です。それでは、きちんとした良質の、100%天然の精油の見分け方のポイントを、お教えしましょう。

・茶色か青の遮光壜に入っているものを選ぶこと
精油の成分の中には、光で変質してしまうものが多くあります。ですから、品質を保つために、きちんとしたメーカーは精油を遮光壜に入れるのです。もし、あなたが手にしたものが透明の壜に入っていたら、そのメーカーは信用できません。

・植物の学名(ラテン名)、産地が明記されていること
 人間の学名がホモ・サピエンス(Homo sapiens)であることは皆さんもよくご存じですね。人間と同じように、地球上の植物や動物には普段呼ばれている通称の他に学名が必ずついています。そして、その学名はラテン語で記されています。

 何故、この学名が重要なのでしょう?それは通称では同じ名で呼ばれていても、含まれている成分が違ったり、本物よりも手に入りやすくて安かったりするものがあるからです。
 また、産地によってもケモタイプやグレードの差があり、使用目的が明確な場合、重要なポイントになります。

 良質できちんとしたメーカーなら、自社製品に誇りを持っていますから、そういう重要な情報は必ず明記してあるのです。

・使用部分が明記されていること
 これも重要なことです。植物は部位によって含まれる成分が違います。香りだけを重視するなら、香りの成分があるどの部分でも構わないかもしれません。でも、他の重要な有効成分があまり含まれていなければ、精油としては合格とは言えません。
 また、部位によって香りも違えば有効成分も違い、それぞれ独立した別の精油として活用されているものもあります。


 なかには、どちらかというと最初から効能別に選びたい人もいるかもしれません。そういう人向けに「リラックスしたいとき」「気分をシャキッとさせたいとき」など、あらかじめブレンドされているものもあります。
 アロマテラピーで、何をまずやりたいか決まっている人は、そういうブレンドされたものを選ぶのも良いかもしれません。今までお話しした注意点をクリアしている精油のメーカーのものなら、安心して使える商品です。

 その時も、必ず香りのチェックをして下さい。シャキッとしたいときなら多少好みに合わない香りでも構わないかもしれませんが、リラックスしたいときや眠れないときに使うなら、やはり好みの香りのものがいいのです。好きな香りは心に効く――リラックスしたいときなら尚更です。
 

 とにかく、選ぶときには納得できるまでしっかりチェック! これが大事です。

投稿者 asidru : 13:55 | コメント (0)

精油を選ぼう

 今までの回で、アロマテラピーとは、精油とは何か、香りの歴史、そして精油成分の効能についてお話ししてきました。いよいよ、アロマテラピーの実践についてお話ししていこうと思います。

今回は、アロマテラピーの最初の一歩として、精油を実際に手に入れるまでのお話をしていきましょう。

 アロマテラピーをはじめるときに買っておきたいものは色々ありますが、まずは精油(エッセンシャルオイル)が無いとはじまりません。
 初めの一本を手に入れるところから、あなたのアロマテラピーがはじまります。

 最初に買うなら、まずは好きな香りから。
 あなたの好きな香りは何ですか?

 フローラル?
 柑橘系?
 それともウッディ?

 すぐに思いつかないなら、お店に行ってテスターをかぎ比べて、自分の好きな香りを探してみて下さい。
 あんまり一度に試すと、嗅覚が鈍って混乱してしまうので、3~5種類試したら、ちょっと休憩。色々迷いながら選ぶのも楽しいものですよv 難しいことはあまり考えず、直感で選ぶのがオススメです。

 お目当ての精油がもう決まってるあなたも、新しい香りに親しんでみる良いチャンスです。
 雑貨屋の1コーナーにあるものよりも、専門店で買う方が、お店の人のアドバイスも聞けますし、何より信頼性が高いです。
 それから徐々に、目的別に選んでいくのが良いでしょう。

投稿者 asidru : 13:54 | コメント (0)

精油の成分と効果

 今回は、精油に含まれる主な成分とその効果についてお話ししていきます。

 精油には、様々な効果のある成分がそれぞれに含まれていて、それは、全て天然のものです。
 そして、天然=自然界に存在するものは、人に多くの恩恵をもたらしますが、いいことばかりではありません。大自然は、人間の都合の良いようにだけできているのではないのです。
 
 私たちが口にしているものには全て致死量がある、と言ったらきっと皆さんはとても驚かれるでしょう。極端な例として良く挙げられるのが「水」です。
 人間は水がなければ生きていけません。けれど、水も多く取りすぎると死に至るのです。「酸素」もそうです。空気中の酸素の割合があまり多くなると人間は生きていくことができなくなってしまいます。

 ですから、自然から十分な恩恵を受けようとするなら、その危険性もまた、正しく知り、先人たちが蓄えた知恵を活かさねばなりません。

 精油にも同じことが言えます。これからお話しすることは少し難しいかもしれませんが、アロマテラピーを通して、その効果を最大限に享受し、副作用や危険を避けるために、とても重要なことですので、じっくりと読んでみて下さい。

・モノテルペン炭化水素類
 ほとんどの精油に含まれている成分で、特に柑橘類に多く含まれます。酸素に触れて分解し、それによって殺菌作用が起こります。
 殺菌、鎮痛作用などの作用があります。

例)テルピネン、サビネン、ピネン、リモネンなど

・セスキテルペン炭化水素
 消炎作用が特徴。特に、皮膚粘膜に対する消炎作用が有名で、クローブやジャーマンカモミールなどに含まれています。
 うがい薬や胃の薬としてよく用いられる水溶性アズレンも、セスキテルペン炭化水素のひとつです。
 
例)カマズレン、エレメン、アズレンなど


●アルコール
 アルコールは私たちの生活中でもなじみの深い成分のひとつです。構造に(-OH)が含まれるのが特徴です。

●モノテルペンアルコール類
  強い殺菌作用、抗真菌作用を持ち、ラベンダー、ペパーミントなどに含まれます。
 
例)ゼラニオール、シトロネロール、メントールなど


●セスキテルペンアルコール類
  強い消炎作用が特徴が特徴です。その他にも抗アレルギー、消炎作用、ホルモン調整作用など、多くの作用があります。
  ジャーマンカモミール、クラリセージ、サンダルウッドなどに含まれています。

例)グロブロール、ネロリドール、セドロールなど


●エステル類
  精油中のアルコールの一部が酸と反応して、エステル化合物と水に変化します。
   酸 + アルコール → エステル + 水

 構造に(-OCOC-)または(-COOC-)が入っているのが特徴です。

 中枢神経系の働きを抑制することによって、鎮静作用、抗けいれん作用が発現します。その他にも消炎作用、抗ウィルス作用があります。ラベンダー、プチグレン、クラリセージなどに多く含まれます。
 
例) 酢酸リナリル、安息香酸ベンジル、ラバンデュリルなど

●オキサイド類
 代表的な成分に1,8シネオールがあります。去痰作用があり、呼吸器系の感染症に有効な他、防腐作用もあります。高温・多湿に弱く、酸化しやすいなど変化しやすく、また皮膚刺激性もあるので、取り扱い・保存には注意しましょう。
 ユーカリ、ラバンサラ、ニアウリなどに含まれます。
例)1,8シネオール、ビサボロールオキサイドなど

・フェノール類
 殺菌作用、免疫力向上作用があります。
 刺激性があり、長期使用すると肝障害になる恐れがありますので、使用量・使用期間など取り扱いには注意して下さい。また、乳児、妊婦への使用は避けて下さい。
  タイム、オレガノ、クローブなど、料理でよく使われる有名なハーブにも含まれています。
例)チモール、オイゲノール、trans-アネトールなど

●アルデヒド類
 アルコールが脱水素酸化するとアルデヒドになります。お酒が体内でアセトアルデヒドになり、二日酔いの原因となるのは有名ですね。
 エタノール→→アセトアルデヒド+水素 

    アルコールデヒドロゲナーゼ

 構造に(-CHO)が含まれているのが特徴です。

 このアルデヒドにはアルコールとカンファーのちょうど間にあるような作用があります。消炎、殺菌、抗真菌、解熱、免疫刺激作用などがあります。
 皮膚刺激性が強いので低濃度で使用するようにして下さい。また、不安定ですぐに化学変化を起こし、変質するので気をつけて冷暗所に保存して下さい。

 メリッサ、レモングラスなどの主成分として含まれます。

例)バニリン、シトラール、ネロールなど。


●ケトン類
 ケトンも、アルコールが酸化してできる物質のひとつです。構造に(=O)が入っているのが特徴です。
 
 代表的作用は粘液溶解作用で、喉にしつこくからみつくねばねばとした痰を取るのにも役立ちます。その他、鎮痛、脂肪分解などがあります。
 神経毒性があるため、量や使用期間に十分注意すること。乳児・妊婦、老人には使用しないようして下さい。

 ただし、全てのケトン類がが危険なわけではありません。ユーカリ、ローズマリーは含有量が少ないため、副作用の心配はありません。
 逆に要注意なのはヒソップ、セージ、ワームウッド、樟脳です。特に樟脳はカンファーの含有率が高く、また発ガン性、肝毒性のあるサフロールも含まれているため大変危険です。
 カンファーの含有率が高い精油は特に使用量に注意するようにして下さい。

例)カンファー、ベルベノン、メントンなど

●ラクトン類
 粘液溶解作用があり、ケトンと同じく神経毒性があります。
 柑橘類に多く含まれ、日光に過敏に反応し、皮膚に炎症を起こす日光感作性があるので注意が必要です。
 
 特に、ベルガモットに含まれるベルカプテン、クマリンはメラニン産生を遺伝子レベルで傷つけると言われています。
 メラニンはシミやソバカスの原因として美容の敵のように言われることもありますが、紫外線から皮膚を守るという非常に重要な働きを持っています。

 紫外線は人間が健康に生きていくために必要なものです。朝起きたとき、前の夜に多少夜更かししていても、朝の陽の光を浴びると、体内時間がリセットされて、夜になったら、きちんと眠くなってくれます。また、日光を十分に浴びていないと、カルシウム産生がうまくいきません。
 そんな風に重要な紫外線ですが、最初にお話ししたとおり、自然のものは良いことばかりではないのです。

 メラニン産生が阻害されると、紫外線による皮膚ガンの発ガン性が増大しますので、日中は直接肌につけないなど、注意して使用するようにして下さい。

例)ベルカプテン、クマリン、ジャスミンラクトン 

投稿者 asidru : 13:48 | コメント (0)

香りの心理的作用

・好きな香りは心に効く
 駅の中にある某お菓子屋さん。いつも甘い香りが漂ってきます。でも、疲れて帰ってくるときはその甘ったるい匂いが辛くて辛くてしょうがない。好きな人には、嬉しいけれど、そうでない人には嬉しくない。エレベーターの中のキツい香水も困りものですよね。

 そんな風に人には好きな香りと嫌いな香りがあるのは当たり前です。そして、好きな香りは、心にとてもよく効くのです。大好きな香りをかいでいると、心が落ち着くといった経験は、誰しも覚えがあるでしょう。
 
 嫌なことがあったり、何かを我慢してたりすると、大脳辺縁系が抑えられ、ストレス状態になりますが、好きな香りをかぐと、視床下部に作用して、リラックスすることができます。

・香りが引き起こす「プルースト効果」
 街を歩いていて、漂ってきたかすかな香りで、ふと立ち止まる。何か、思い出しそうな気がする。
 あれは、何だった?もう一度香りを吸い込んでみる。
 その途端、鮮やかにあの日のあの場面が蘇ってきた。もう、何年も前のこと。その時の気持ちまで覚えてる。そう、あのときもあの花が咲いていた―――。

 そんな風に、何かの匂いで、記憶が蘇ってきた経験はありませんか?
 私は薬局の調剤室でフェノール亜鉛華リニメントを練っていると、何か思い出しそうになって気になって仕方ないことがありました。それは、小学校の水彩絵の具の匂いにとてもよく似ていたのでした。うーん、何だか全然ロマンチックじゃないぞ。
 
 特定の匂いで記憶を喚起されることを「プルースト現象」と言います。
 プルーストの名作小説「失われた時を求めて」で、記憶を失った登場人物が、マドレーヌを紅茶に浸したときの香りで記憶を蘇らせたというエピソードに由来します。

 香りは記憶の引き出しの開け閉めに関わっています。それは、記憶を司る海馬に、香りがダイレクトに作用するからなのです。
 香りが記憶されるとき、海馬は香りだけではなくてその場の情景や感情も一緒に結びついて記憶されるのです。

 この記憶は、個人的な記憶だけでなく、遺伝子に組み込まれた人類の記憶も含まれています。
 匂いの好みに個人差はあれど、腐敗臭は誰でも嫌な匂いだと感じます。こんんな風に、危険なものを理屈ではなく生理的に判断したり、生命を維持するために有益になるようなシステムができあがっているのです。

 スヌーピーでライナスがいつも毛布を持ち歩いているのは何故でしょう。毛布の存在そのもの、手触り、色と形、まつわる想い出、理由は色々あるでしょう。


 私はそこに、匂いも加えたいと思います。ライナスが常に持ち歩いていて、「これがあると安心できる」と思っていると、その毛布の匂いそのものがライナスにとって安心できる匂いとして記憶されているから、ではないでしょうか。

 香りが起こす心理作用は、そのメカニズムがわかっていても、何だかとても不思議な感じがしますね。だからこそ、太古の昔から、香りは神秘的なものとして扱われてきたのだと思います。

 アロマテラピーを通じて、良い香りでリラックスしたり、マッサージで痛みを和らげたり――そんなふうにして、香りが与えてくれる心地よい記憶が増えていくことは、あなたの生活を更に心豊かにしてくれることでしょう。 

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精油(エッセンシャルオイル)の作用

 それでは、精油(エッセンシャルオイル)はどういうメカニズムで私たちに作用しているのでしょう?

 精油(エッセンシャルオイル)が私たちの体に作用するのには、二つのルートがあります。ひとつは、鼻から直接脳に作用する「嗅覚」としてのルート。もう一つは、皮膚から吸収されて体内をめぐるルートです。

・鼻からのルート
 先ほど、匂いの元の物質が鼻の粘膜にくっついて香りを感じるというお話をしましたね。それを、もっと詳しく説明していきましょう。
 
 鼻の粘膜には、匂いを感じる受容体があります。この受容体は、鍵と鍵穴の関係のように、決まった物質にしか反応しません。人間の場合、匂いの受容体は350種類前後だと言われています。

「何か、思ってたより少ないみたい」

 そうですね。世の中にはたくさんの匂いが満ちています。食べ物の匂い、植物の匂い、動物の匂い、薬品の匂い……数え上げればきりがありません。でも、そのひとつひとつの匂いも、分析してみれば、いくつかの匂いの物質の組み合わせであることがわかります。

 受容体は350でも、組み合わせが変われば感じる匂いも変わります。350の自由な組み合わせは一体何種類あるのでしょう? そう考えてみると、最初に聞いた印象と違い、350の受容体で人は数え切れないほどの匂いを感じることができるのだということがおわかりいただけると思います。

 さて、匂いの物質が受容体と結びつくと、インパルス(電気信号)が生まれて、嗅覚神経から脳へ作用していきます。嗅脳と呼ばれた大脳辺縁系を経て、ルートはまた二つに分かれます。ひとつは海馬や大脳に行くルート。もう一つは視床下部から自律神経系、免疫系、内分泌系へと分かれるルートです。

・皮膚からのルート
 精油(エッセンシャルオイル)をキャリアオイルで薄めてマッサージしたり、クリームにして塗ったりすると、肌から精油の成分が浸透します。薬やサプリメントを内服すると、最初に肝臓を通ったときに、多くが代謝されて排泄されてしまいます(これを初回通過効果と言います)。でも、皮膚からの吸収は初回通過効果をウケないので、とても効率よく、血管から各臓器へと循環していきます。
 もちろん、皮膚そのものに対する直接的な効果が非常に大きいことはいうまでもありません。

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香りの正体

 香りの正体は物質です。前回、揮発度についてお話ししましたね。
 何かの香りを感じているとき、その香りの元になっている成分は、空気中に揮発し、あなたの鼻の穴に入り込んで粘膜にくっついているのです。

 ちょっとアレなたとえですが、あんまり状態のよろしくない公園とかのお手洗いって、嫌な匂いがしますよね。

「臭いなぁ。ヤだなぁ。でも、他にないからしょうがないし」

 あなたは自分に言い聞かせて、臭いのを我慢して順番を待ちます。自分の番をすませて、手を洗う頃には何だかいつの間にか、さっきまであれほどイヤだった匂いががそんなに気にならなくなってたり。

 ――――――ええっ?、私って無神経?

 大丈夫、大丈夫。誰だって、同じです。嗅覚は五感の中で最も敏感です。そして最も慣れやすいものなのです。人間は脳の発達に連れて、大昔に比べてかなり嗅覚が鈍くなってしまいましたが、他の動物たちは、人間よりもずっとずっと強い嗅覚を持っています。

 たとえば、人間に最も身近な動物である犬は嗅覚が鋭いことで有名ですね。警察犬や麻薬犬は、人には感知できないほどのその鋭い嗅覚で、目的の匂いを追跡し、探し当てるのです。
 鮭が自分が生まれた川に間違わずに戻ることができるのは、その川の匂いの記憶をたどっていくからなのです。あの広大な海の中、自分の生まれた川の匂いを間違うことなくたどってゆけるなんて、凄いことだと思いませんか?

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精油の抽出法~各論

エッセンシャルオイルの抽出方法について詳しく説明します

水蒸気蒸留法

 植物の芳香成分は、植物の細胞で作られるエッセンスです。このエッセンスは蒸留によって化学変化を起こし、精油と私たちが呼んでいるものになります。

 原料を蒸留釜に入れ、そこに高温の水蒸気を通し、植物のエッセンスを揮発させます。揮発したエッセンスを含んだ水蒸気は、冷却器で急激に冷やされ、液化します。このとき、液体は二層に分かれ、上の部分は精油となり、下の部分はフローラルウォーターになります。このフローラルウォーターにも精油成分が少し含まれているため良い香りがし、化粧水などに利用されます。


溶剤抽出法

 熱や圧力に弱いデリケートな花には水蒸気蒸留法は使えません。
そこで、使われるのがこの溶剤抽出法。ベンゼンなどの有機溶剤に原料を漬け込み、低温で揮発させます。後に残ったコンクリートと呼ばれるものになります。
 コンクリートに再びアルコールを加えて溶かし、揮発させて抽出します。


圧搾法

 読んで字のごとし。オレンジなどの柑橘類はエッセンスは果皮の外側に最も多く含まれています。その果皮を押しつぶしてエッセンスを絞り出すのが圧搾法です。機械による圧搾が現在では増えてきていますが、やはり手絞りの方が品質が良いと言われています。
 簡単に精油が取れる圧搾法ですが、この方法でとれる精油は劣化も早いので、封を切ったら早めに使い切るようにしましょう。
 
 この3つの抽出法でできる精油の内、厳密には溶剤抽出法でできたものはアブソリュート、圧搾法でできたものはエッセンスと言われていますが、ここでは三種とも精油とよぶことにします。

 さて、この他にも精油の抽出法はまだあるのですが、あまりにも効率が悪いため、あまりポピュラーではありません。
 その中でも、アンフラルージュ法と呼ばれる方法で抽出された最高級のジャスミンのオイルは、何と200個の花からたった一滴しか取れないというのですかですから驚きです。

投稿者 asidru : 13:42 | コメント (0)

精油の抽出法

 精油は植物から抽出されますが、一体誰がその方法をあみ出したのでしょう? それは10世紀のペルシャの錬金術師アブ・アリ・イブン・シーナ(アヴィセンナ)です。

錬金術と言えば、何だかオカルト的な、あやしげな響きですね。中には、「あ、今年映画になった『鋼の錬金術師』に出てくるアレでしょ?」と思う人もいるかもしれません。
 でも、そんなイメージと反して、昔の錬金術は医学と重なる部分がとても多いものでした。私のプロフィールのページでカドゥケウスの杖が医療と薬学のシンボルであることを説明していますが、実はこの杖は錬金術のシンボルでもあるのです。

 杖の元々の持ち主であるヘルメスが、ローマ神話ではマーキュリーという名であり、錬金術の神であること、また、エジプトのトート神や錬金術の始祖ヘルメス・トリスメギトスと同一視されていたことも興味深いところです。
 前述の『鋼の錬金術師』(のTV版)でも主人公が「錬金術は科学だ!」と言い切っていたりしますが、実際の処、当時の錬金術というのは全ての科学分野とリンクしていたといっても過言ではないでしょう。

 そして、錬金術で有名なパラケルススが医師でもあったように、アヴィセンナもまた、医師の側面を持っていました。
 アヴィセンナが完成させた水蒸気蒸留法で抽出された精油を、シェイクスピアは「アラビアの香水」と呼んで讃えました。
 それ以前の時代は、植物を水に浸したり、植物油に漬けた香油として用いていました。彼が完成させた水蒸気蒸留法は、まさにアロマテラピーの歴史のエポック・メイキングと言えます。

 さあ、具体的な精油の精製法=香りの成分が解け合った精油のみを植物から取り出す方法を説明していきましょう。

投稿者 asidru : 13:41 | コメント (0)

精油―エッセンシャルオイル―とは

 芳香植物――香りのする植物には香りの元になる、様々な成分が含まれています。それを植物精油――エッセンシャルオイル――といいます。アロマオイルとも呼ばれていますね。

 オイルといっても、実は精油は一般に言う「油」ではありません。

「え? でも、この前お風呂にアロマオイル垂らしたけど、油みたいに浮いてたわよ?」
 はい、その通り。
 アロマオイルの成分は、アルコールが多く含まれています。

「でも、お酒はアルコールだけど水に溶けるでしょ? 水割りとか、カクテルとか、色々あるじゃない」

そう、私たちが飲用にしているエタノールや、中学や高校の化学実験室によく置いてあるメタノールは、低級アルコールといって、水に溶けるアルコールです。
 低級と言っても、質が悪いという意味ではありません。有機化学の分野では、同じカテゴリに属しているものでも、炭素数が少ないものは低級、多いものは高級と呼び分けているのです。専門用語には、こんな風に、ちょっと一般的には意味が違って聞こえるものがたくさんあります。

 高級アルコールは炭素数が多く、水には溶けません。ですから、お風呂にアロマオイルを垂らしても、溶けていかないのです。
 そんな風に水に溶けない精油を薄めるためには、キャリアオイルと呼ばれる植物性の油や、エタノールが用いられます。
 
 精油が放つ香りは実に様々でバラエティに富んでいます。甘いフローラルから、さっぱりとした柑橘系、スパイシー、さわやかなウッディー、刺激臭まで。 中には、「えっ? 何、このニオイ!」と、思わず顔をしかめてしまうような香りもあります。
 でも、そんな精油にも、あなたがまだ知らないだけで、とても素敵な効果がぎっしりと詰まっているのです。 
「良薬は口に苦し」といいますが、精油の香りもまた、同じようなことが言えそうです。

 精油は植物に含まれている成分を、ギュッ!と濃縮したものですが、空気に触れると、あっという間に空気中に拡散していってしまいます。それだからこそ、私たちは香りを感じ取ることができるのです。

 物質が空気に触れて拡散することを揮発といい、その速度や拡散しやすさを揮発度という言葉で表します。

 精油の中にあるのは一つの成分だけではありません。色々な成分が混じり合って溶け込んでいます。その中のそれぞれが違う揮発度を持っています。
 ですから、もちろん、精油毎に揮発度は変わってきます。

精油をブレンドすると、この揮発度によって、時間が経つごとに香りが変化してゆきます。
 まず最初に香ってくる揮発度の早いものがトップノート、次に揮発度が中程度のミドルノートへと移ってゆき、最後に、揮発度がきわめて遅いベースノートが漂います。

この三つのノート(速度)は香りの世界では重要なもので、香水をブレンドするパヒューマーと呼ばれる職人たちは、香りのブレンドをするとき、どんな順番でどんな香りを漂わせたいかを入念に見当し、その組み合わせで、香水のイメージも変化するのです。
 あなた好みの香りをアロマオイルでブレンドしてみるのはとても素敵なことです。アロマテラピーになれてきたら、オリジナルのブレンドにも、是非挑戦してみて下さい。

投稿者 asidru : 13:40 | コメント (0)

美女と香りの関係

 かぐわしい香りと美女は、どうやら切っても切り離せない関係にあったようです。ちょっと奮発した香水を付けるとき、あなたも、いつもより美人になったような気持ちになったりしませんか?

 香りと美女、と言えばまず思いつくのは古代エジプト最後の女王クレオパトラ。
 彼女は実に様々な香りに関する逸話を持っています。「クレオパトラの鼻があと3㎝低ければ歴史は変わっていたかもしれない」とよく言われますが、
クレオパトラが今もなお世界三大美女の筆頭として讃えられるのは、男心をくすぐる、そのかぐわしさが大きな魅力の一つだったのだと、私は思っています。

 クレオパトラは香りを愛し、高価な麝香、薔薇、シベット、龍涎香などを惜しげもなく日々の生活に取り入れていたのです。
 香水の風呂に身を浸し、香油でマッサージ、そして仕上げに体中に香料を擦り込む――まるで、毎日超高級エステサロンに通っているかのような豪華さは、さすが女王。香料代だけで今の日本円にして20万円以上と聞くと、羨ましいを通り越して、まさに別世界、といったところでしょうか。

 それでは東洋の美女は? と言えば楊貴妃ですね。彼女もまた、香りを大変に愛していました。楊貴妃が建てた沈香亭は、その名の通り、柱に沈香と白檀を使っていました。
 沈香というのは別名栴檀。白檀が非常に高価なものであることをご存じの方も多いと思いますが、沈香もまた、その等級に応じて天井知らずの値がつく香木で、その最高級品「蘭奢待」は今も正倉院に大切に保管されています。

 そんな高価な香木を、そのまま柱に使い、更に壁には麝香、乳香などの高価な香料を塗り込めた沈香亭は、何と牡丹を観賞するためだけに建てられたというから驚きです。牡丹の花期は4月半ばから5月半ばの約1ヶ月。1年の内のほんの1ヶ月の牡丹の盛りに、花の女王と呼ばれた牡丹を愛でながら、沈香亭の香りに酔う――――なんとも贅沢な話です。

 現代にも、香りにまつわる逸話を持つ美女がいました。マリリン・モンローのシャネルの5番の逸話はあまりにも有名なので、モンローとは全く違うタイプの美女、銀幕の妖精と呼ばれたオードリー・ヘプバーンの逸話をご披露しましょう。

 「麗しのサブリナ」で、まだ新人女優だったオードリーはジバンシィのデザインした衣装を見事に着こなしました。
 それがきっかけで親交を持ったオードリーとジバンシィ。ある時ジバンシィはオードリーのためだけに香水を作りました。ところが、それがあまりにも改心の出来だったので、ジバンシィはその香水を世に出したくなってしまったのです。
 おそるおそるこの香水を市販しても良いかと尋ねたジバンシィに、オードリーは「ダメ!」と即答。けれど、結局市販するに至ったその香水を、ジバンシィは「禁断」の意味を持つ「ランテルディ」と名付けました。

 この逸話に限らず、何となく、美女と神秘的な香りが結びつくと禁断のイメージがするのは、その美しさゆえなのかもしれません。

投稿者 asidru : 13:36 | コメント (0)

古えの貴重な香り・乳香(フランキンセンス)と没薬(ミルラ)

 古代の代表的な香料として、乳香(オリバナム)と没薬(ミルラ)があげられます。両方ともフウロソウ目カンラン科の樹皮から取れる樹脂です。


・乳香
 乳香は、そのままではほとんど匂いを感じませんが、火にくべた途端、甘く強い芳香を放ちます。この香りの成分はα-ピネン、サピネンです。

また、乳香が貴重なのはその独特の芳香のみならず、非常に強い殺菌効果をも併せ持っていたからです。クレゾール、チモールがその殺菌成分になります。

 何千年もの間、乳香は宗教や文化に溶け込み、また民間薬としても活躍してきました。現在もその地位は大変高く、フランスでは「純粋な芳香」という意味を持つフランキンセンスと呼ばれ尊ばれているのです。

・没薬
 そして、その乳香と並び称されるのが没薬です。没薬の名がミイラの語源となったことは先ほどもお話ししましたね。乳香と同じく、クレゾールが含まれていて殺菌力もありますが、没薬の特徴はなんと言っても、その強い防腐力です。オイゲノールがその防腐力の主役で、ミイラを作るときにその威力を発揮しました。

 また、香りも大変良く、ムスクに似た甘いエレガントな香りは上流階級の貴婦人方に好まれ、香油として愛用されていました。

 二つの大いなる香料、没薬と乳香は、今までにお話ししたとおりの薫り高さと優れた効能ゆえ、大変貴重なものとして扱われていました。
 キリスト生誕の折、東方からはるばる訪れた三賢者から捧げられたのも没薬と乳香でした。救世主の生誕に、賢者たちは最高の礼を尽くしたのです。

 シバの女王で有名なシバの国は、実はこの没薬と乳香の重要な産地であり、独占販売を行っていたといわれています。旧約聖書でシバの女王がソロモン王が会見した折に、女王がソロモン王に乳香を進呈しているのは、そういう事情があったからなのです。特に乳香同量の金の価格よりも高価だった、といわれ、古代ペルシャで「乳香は神、没薬は医師、黄金は王」と言わしめるほどでした。

投稿者 asidru : 13:29 | コメント (0)

香りの歴史のはじまり

 アロマテラピーについて詳しくお話しする前に、香りの歴史についてお話ししましょう。
 どんな風にして昔の人々が香りを役立ててきたかを知ることで、何故アロマテラピーが生まれたのか、そのわけも、きっとすんなりと心に浸み込んでくることと思います。


 さて、アロマテラピーが確立するずっとずっと昔から、香りは人類にとって重要なものでした。その歴史は、遡ること、なんと15万年。
「え? そんなに大昔から?」
 実は、そうなんです。考えただけで気が遠くなるような、遠い遠い昔から、人は経験的に、香りが自分たちにとって役立つものだということを知っていたんですね。それって、かなり凄いことだと思いませんか?

 15万年前といえば、ネアンデルタール人の時代です。彼らはどんなふうにして香りを利用することを思いついたのでしょう。
 さて、香料を意味するperfumeはラテン語のper fumum=煙を通してから派生した言葉です。つまり、ネアンデルタール人は火を覚え、暖を取ることや灯りのために色々な草や木を火にくべている内に、そこから「火にくべると良い香りがするもの」を経験的に覚えていったのでしょう。

 想像してみて下さい。何の気無しにその辺にあった木を火に放り込んだときに、今まで知らなかったとても良い香りがあたりに漂ったときの、彼らの驚きと感動を。現代に生きる私たちですら、良い香りには何か神秘的なものを感じることがあります。
 15万年前という途方もない過去にあったネアンデルタール人にとって、その香りは、どれほど彼らを陶酔させ、あるいは気分を高揚させたことでしょう。

 そして、それはダイレクトに彼らの原始宗教へと結びついていったのです。彼らは原始宗教の儀式――特に、死者を埋葬するときに香りを用いました。
 香木を火にくべたとき、得もいわれぬ香りを漂わせながら夜空へとたち上ってゆく薫煙は、死者の魂を天に導いてゆく、呪術的かつ神聖なものとしてみなされていったのです。

 時代は下って古代エジプト。エジプトと言えば何を思い出しますか?
 ピラミッド、スフィンクス――そして、やはりミイラなのではないでしょうか。

 香料はミイラを作るとき、防腐剤として重大な役目を担っていました。中でも多く使われていたのはシダーウッドです。エジプトでは死体を完全な形で保存しておけば、死者の魂が戻ってくると信じられていました。
 そして、シダーウッドは永久不滅のものと考えられており、シダーウッドの香油を浸した麻布で死者を包んで魂の復活を祈ったのです。
 ミイラにはシダーウッドの他にも様々な香料が防腐や消臭などのためにふんだんに用いられています。ミイラの語源になった没薬(ミルラ=myrrha)や丁子(クローブ)、肉桂(シナモン)が代表的なものです。

 死の儀式は古代宗教では重要なものであり、そこで使われる香料というものもまた、特別なものとして扱われていたのですが、特別視されるあまり、古代エジプトでは王と僧侶しか香を扱うことを許されませんでした。

 巷に香りがあふれ、学生でもたやすくブランドの香水を手にし、思うままに香りを楽しむことができる現代人の感覚では「えーっ! 信じらんなーい!」「ずるーい!」って感じですよね。

 でも、昔は香料は貴重で高価なもので、たとえ禁じられていなくてもなかなか庶民の手に入るものではありませんでした。
 だからこそ、新約聖書でマグダラのマリアが香油をキリストの足に塗ったとき、ユダが「何という勿体ないことをするのだ」と怒り、キリストは「それほど高価なものを私に捧げてくれるというその気持ちが有り難いのだ」とユダをいさめたのです。

 今でも世界各地のさまざまな宗教で、聖なる香りは儀式に用いられています。古えに生まれたアミニズムの儀式の風習は、連綿と途切れることなく、私たちが普段気づかないところで現代に息づいているのです。

投稿者 asidru : 13:25 | コメント (0)

アロマテラピーとは

 前回の「アロマテラピーへの誘い」で、アロマテラピーの世界への扉が開かれました。では、アロマテラピーとは本当はどういうものなのでしょう。

 アロマテラピーは芳香植物から取った100%天然の精油を使って、心や体の不調を整える自然療法のことで、日本語では芳香療法といいます。
 芳香=aromaはギリシャ語、療法=therapyは英語読みではセラピー、フランス語読みではテラピーですが、ここでは一般的になじみのあるフランス語読みのテラピーで統一して、アロマテラピーと呼ぶことにしましょう。

 同じ種類の植物から取った精油でも、その植物が育った場所の条件によって、精油の中の成分の比率が大きく異なってくるものがあり、それをケモタイプと呼びます。ローズマリーはケモタイプの中でも特に有名です。

投稿者 asidru : 13:24 | コメント (0)

リラックスした状態とは?

自律神経という言葉を知ってますか? 自分の意志にかかわらず、脳がコントロールして体や心を調節してくれる神経のことです。自律神経には交感神経と副交感神経に別れています。

 大まかに分けると、交感神経が優位なときは緊張している状態、副交感神経が優位なときは、リラックスしている状態です。ところが、ストレスが溜まってくると、自律神経はずっと交感神経に傾いたまま。リラックスできなくなってしまうのです。

 副交感神経がきちんと働いていると、リラックスして、よく眠れ、ストレスを追い払ってくれます。また、リラックスしているときの脳波はα波、さらに深いリラックス状態の時はθ波が出ていると言われています。

 じゃあ、ずっと副交感神経が優位だったら、一日中リラックスできて楽しく過ごせるの?

 ――そうではありません。副交感神経がリラックスするのにとても大切なように、交感神経はやる気を出したり、頑張ったりすることに役立ってくれる、大切な神経です。
 もし交感神経が働いてくれなかったら、やる気がなくてダラダラしてしまうし、体も緊張感を失ってしまいます。

 ひとは、一日中ずっと緊張していてもリラックスばかりしていても駄目で、この二つの神経がバランス良く働いてくれることが大切なのです。そうすれば、心も体も調子が良くて、少々のことではへこたれない元気なあなたでいられるのです。

 さて、お話をリラックスに戻しましょう。リラックスした状態にもっていくことをリラクゼーションと呼びます。

 世には、多くのリラクゼーションの方法があります。自律訓練法、呼吸法、様々なマッサージ、瞑想、アロマテラピー……数え上げればきりがありません。私たちは、上手にこのリラクゼーションを使って、より簡単に、快適に、自分自身をリラックスした状態へ持って行くことができるのです。

 そんなリラクゼーションの方法の一つ、アロマテラピーを最初に取り上げて、お話ししていきましょう。

投稿者 asidru : 13:22 | コメント (0)

癒しブームとリラクゼーション

「あーあ、もう。やんなっちゃう。また残業だよ」
「クソ、部長の奴、無茶言いやがって」
「毎日メールしてるのに、何でちゃんと返事くれないの? まさか、他に好きな人できたとか……?」

――――と、まあ。とかく現代人はストレスが多いものです。会社でも、町でも、家の中でも、あちこちにストレスの原因が転がってる。ただでさえ疲れてるのに、満員電車で酒臭いオジサンに勝手にもたれられたりしたら、もうイライラも最高潮。ちょっとぶつかっただけなのに、何かもの凄くひどいコトされた気分になったり。
 
 あーもう!誰かどうにかしてーーーっっ!なんて叫びたくなっちゃう。とにかく、身も心もへとへと――――そんな人が多いのではないでしょうか。

 で、ここに数年前からの癒しブーム。本来癒しって良い言葉のはずなのに、マスコミに流れてブームになっちゃうと、何でこんなにうさんくさい感じになっちゃうんだろ。不思議ですね。

 でも、自分を癒すと言うことはとても大事なこと。それを忘れていると、だんだんストレスが大きくなって、いろんな病気を呼び込んでしまいます。

 それじゃ、癒しって何なんでしょう?

 それは、心も体もリラックスさせることです。

 ほんとは癒しってもっと簡単なもので、さわやかな風に吹かれたり、道ばたの綺麗な花を眺めたり、仲良しな人と美味しいもの食べたり、好きなことしたり。
 とにかく心や体にとって心地よいことをする――それだけで、自然にストレス解消できてリラックスできるものなんです。
 
 でも、今はストレスの原因が多すぎて、ストレスから自分を守ろうと、心にも体にも対ストレス用の鎧みたいなものを作ってしまって、それが、かえってまたストレスの原因になってるんじゃないかなって思います。

 そんな重い物つけてたら、リラックスできるものもリラックスできるわけがありませんね。だから、普通に好きなものに触れたりする余裕すらなくなって――それどころか、何が自分にとって心地よいのかすら忘れてしまって、ストレスが溜まりに溜まり、心も体もラクになりたくて悲鳴を上げているのでは?

 ここまで来ると、やはり何かの助けを借りてでも、心身共にリラックスしないと病気になってしまう。それは、もうみんな心のどこかで感じている。そんな需要が大きなマーケットだからこそ、ここまで癒しブームは早く広く世間に浸透していったんじゃないでしょうか。

 私としては、好きなものを一つでも多く作ることをおすすめしたいけど、もうギリギリ! って人も多いはず。じゃあ、どうやったら、心や体につけてしまった鎧を剥がして、より簡単にストレス解消してリラックスした自分になれるか。その方法をお話ししていきましょう。

投稿者 asidru : 13:15 | コメント (0)

執筆者星野青猫プロフィール 星野青猫:プロフィール

薬剤師青猫のアロマテラピー&リラクゼーションナビ好評連載中☆

歴史・文学・民俗学等に造詣の深い薬剤師青猫が、 世界での様々なエピソードや身近な例を挙げながら アロマテラピーやリラクゼーションについて綴るコーナー。
「アロマテラピーって興味はあるんだけどちょっと難しいな」
「使ってみたいけど、どうやって使ったらよいのかよくわからない」
アロマテラピー初心者の方にもわかりやすく解説していきます。 もちろんプロの方にも納得していただけるような 薬剤師ならではの化学的な解説もご紹介。
このコラムを通して、アロマテラピーのことを一段と好きになってもらえれば幸いです。

星野青猫:プロフィール
大阪府出身
摂南大学薬学部卒業後、上京
調剤薬局管理薬剤師
病院内薬局管理薬剤師
病院内薬局在庫・PC担当
企業内健康管理室管理薬剤師
を経て、現在に至る。

ハーブ、アロマテラピー、心理学・民俗学・歴史などに興味を持ち、日々勉強中。色々な仕事をこなし、小説家になるのが野望。

MyBirthday読者賞佳作受賞
TV朝日「新部長刑事ストーリー大賞優秀賞」受賞

イラストレーターとしても活動中。
このページのバナーやコラム中のカットも青猫作です。
CGメインの星野青猫個人サイトはこちら→ http://aoneko.k-server.org/
(星野青猫へのイラスト&執筆のご依頼も上記サイトより直接どうぞ。)

☆TOPページのバナーに使われている意匠は「カドゥケウスの杖」別名ヘルメスの杖とも呼ばれています。ギリシャ神話でヘルメスから医学の神アスクレピオスの手に渡ったことから、医学・薬学のシンボルとされています。

投稿者 asidru : 13:10 | コメント (0)